『強迫性無謬症候群』

小さな劇場のそで
閉じた幕を内側から見つめる
幕が上がる時を幻視して
全身が委縮する

心臓が早鐘を打つ
見落としはないか 誤りはないか
胃が 食道が収縮する
もっとできることが やるべきことがあるはずだ

……わかっている
これは 捨て去るべき焦燥で
過大に膨れ上がった幻影だとわかっている

それでも この小さな脳と心臓は
幻の恐怖に囚われ 苛まれる

開演のブザーが鳴り響く
――ああ 幕が上がってしまう