『夜陰に闊歩す』

夜道を照らす街灯は 舞台を照らすスポットライトに似ている
そんな考えが思い浮かんだとある日から
街灯の明かりを避けて 夜道を歩くようになった
だけど その理由は定かではない

スポットライトを浴びるような輝かしい人生じゃねぇなと思ったからか
はたまた 主役だなんだと持て囃されて生きるのは恥ずかしいと思ったからか
ただ一人 照らし出されることをつるし上げられているように感じるからか
あるいは 単に光を嫌う陰キャの性質故か

理由は定かではないけれど 街灯は避けるのが癖になっていた
だから 闇のとごる川べりを 暗がりのはびこる路地裏を
我が物顔で 闊歩するのだ

猫のように 狸のように
影のように 夜風のように
妖怪のように 幽霊のように